専門医の難しさ

堺市北区新金岡 永山歯科医院 院長の永山です

最近、インターネットで検索して来院される患者さんがおられます。

患者さんに伺ったキーワードをパソコンに入力して調べてみても、当院の名前はあまり出てきません。。。

余程お困りになられてあちこち調べて来られたのでしょうか。。。

できるだけご期待に応えれるように診察に臨むように心がけていますが、一方で、普通の患者さんとは異なりそのような患者さんならではの難しさもあります。

患者さんのお困りごとは人それぞれ様々ですし、ここでその全てを書くことはできませんが、こういうことがあるんですよということを知って頂ければと思います。

 

当院では特に、「根の治療を診てほしい」、「痛みが取れない」と言って来られる患者さんの割合が多いような気がします。

その訴え自体は大学時代から専門外来でよく対応していたので、経験的にある程度の原因を推測することは可能です。

しかしながら、その後の対応については、大学時代には経験しなかったことも含めて、難しさを感じることも多々あります。

 

一つは、大学病院と個人病院との違いです。

大学病院では専門外来に分かれているため、紹介で来られた患者さんの歯を診察した結果、状態が悪くて残すことができないと診断すると自分の担当は終了でした。

そのあとは歯を抜く専門の科に紹介して抜歯してもらい、その後被せ物が専門の科に行ってブリッジや入れ歯、インプラントなどを入れて咬めるようにしてもらっていました。

なので、当時はあまりよくわかっていませんでしたが、専門医としての治療に集中して取り組める環境でした。

また今になって考えると、患者さんも大学病院の先生に説明されて、ようやく納得してもらえるということも多かったように思います。

一方で、個人病院では全ての治療を一人の先生が受け持つため、難しい治療であっても全て自分で何とかして対応しなければなりませんし、その事情や治療結果を患者さんに説明してもなかなか受け入れてもらえないということも起こります。

よって、普通の患者さんを診察する中で難しい根の治療や痛みの治療を行うのは、とても困難であることがこの3年間でわかりました。

 

欧米では大学病院だけでなく個人病院でも、専門医が役割分担して一人の患者さんの治療を担当するスタイルが普及していますが、日本ではまだまだ認知されていないのが現状です。

もう少し詳しく言うと、欧米では専門医による分業スタイルと一般医によるかかりつけ医スタイルが共存していて、患者さんが自由に病院を選んで利用したり、主治医の判断で適切な専門医を紹介したりしています。

一方で、日本においては医科では病院と診療所が機能と規模により同じような役割分担をしていますが、歯科では未だにそのようにはなっていません。

これには様々な要因が関与していて、医科歯科それぞれに難しい問題があるのですが、少なくともこのような状況を先生と患者さんがお互いに理解した上で相談して診察を進めていかないと、うまくいかないように感じています。

 

もう一つは、これは大学時代から引き続き悩みの種なのですが、「根の治療」や「痛み」自体に対応の難しさがあります。

「根の治療」というのは高度な知識と技術と経験が必要になるため、欧米では矯正や口腔外科と並んで専門性が高い分野の一つとされています。(治療の難しさの詳細については専門的な話になるのでここでは省きます)

よって、専門医による「根の治療」は日本ではあまり知られていませんが、いわゆる審美歯科や矯正、インプラントといった自由診療の費用と同等の費用がかかります。

ここでお伝えしたいのは「根の治療」の本来あるべき治療費が高額だということではなくて、それだけ難しくて価値のある治療だということです。

自分の歯を保存して長持ちさせて使えるのか、それとも早期に残すことができなくなり諦めて抜いてしまわなければいけないのか、という自分の歯の寿命に直結することなので、よく考えてみれば当然と言えます。

 

そして「痛み」については更に難しくて、患者さんは肉体的にも精神的にもかなりの苦痛を経験することになりますし、また歯に何らかの問題があって生じているのですが、鎮痛剤程度では簡単に治まらない場合もあるため、その診断と治療は困難を極めます。

残念ながら「痛み」についてはまだ科学的にわかっていないことが多く、臨床的な対応に苦慮することが多いのが現状です。

 

このように、治療が難しい理由はここに書いたことも書いていないことも含めていろいろありますが、過去3年間に渡ってそのような患者さんに向き合い続けてきた結果、当院における治療の難易度や対応方法については、限界も含めてある程度の整理がついてきました。

なので、これからはその経験も踏まえて、より妥当な形で治療を提供していければと考えています。

ご希望に添うことができるかどうかはわかりませんが、今後このような形で来院される場合は特に、ご理解とご協力を頂ければ幸いです。

どうぞよろしくお願い致します m(__)m

 

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たまにですが、学会発表もしています