堺市北区新金岡 永山歯科医院 院長の永山です。
昨今の「物価高騰、賃金上昇」の圧力はすさまじく、医院を運営していく中でも日々実感していて、頭を抱えるしかないのが現状です。
一方で、「アベノミクス」で当初目標として掲げられていたデフレを脱却するための「物価上昇率2%」や「賃金増加」、そしてその後に続いた、少子高齢化・人口減少が確実に予測される中で持続的な経済成長を実現するための「働き方改革」や「技術革新(イノベーション)」という一連の流れから見るに、これは起こるべくして起こった状況であるとも思えてきます。
その中で、自分自身や医院がこれからどう進んでいけばよいのか?、についてはとても難しい課題ではありますが、もはや避けて通れるものではないことも明らかです。
このテーマについてはいろいろお話したいこともありますが、まずは当院における対応のひとつとして、「自由診療の価格改定」(まだ案、移行は2024年5月~)についてお伝えします。(保険診療についてはすでに公的に声明が出されていますが、こちらも頭が痛い問題です・・・)
ご意見がある場合は、コメントに書いてもらえると助かります。(非公開)
まだあと半年くらいは日にちがあるので、今後の参考にさせて頂きます。
どうぞよろしくお願い致します。(2023年10月記載)
※ 全て税抜き表示です。
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【被せ物】
オールセラミッククラウン 120000円→130000円
(開院時に価格表を参考にさせてもらった先輩の医院では、10年前からプレミアム価格で160000円です!)
(技工士さんの技術がとても高くて、技工料も一般的な相場よりも高いです)
(世の中の相場を見ながらですが、いずれはさらに値上げをしていくことになると思います)
ジルコニアクラウン 100000円→110000円
ゴールドクラウン 100000円→120000円(金相場を反映しています)
【詰め物】
セラミックインレー 60000円→70000円
ゴールドインレー 60000円→70000円
ダイレクトボンディング 50000円
【インプラント】
1本 450000円~(骨造成や被せ物の種類、ガイドの使用により、多少の上乗せがあります)
【義歯】
ノンクラスプデンチャー(片側) 100000円→110000円
金属床義歯(片側)200000円→220000円
金属床義歯(両側、総義歯) 300000円→340000円
※ コンビネーションやオプションを追加する場合は、多少の上乗せがあります。
【保存治療・根管治療】
※ 専門医レベルの治療をご希望される場合、治すのに保険適応外の材料の使用が必要な場合、など
→ 精度を上げて治療することでより良い結果につなげて、歯の寿命を延ばすことを目指します
(保険診療の中では様々な制約により、「専門医レベルの治療」はご提供することができません)
(大学病院でも東京医科歯科大学では、専門医の担当を希望する場合は自費治療(自由診療)になると聞いております)
歯髄温存療法(MTAセメント) 40000円
(神経を抜いてしまった場合にかかるそれ以降にかかる治療費と時間が浮くことになり、何より歯の寿命が延びます!)
根管治療 ・・・ ラバーダム or Zoo使用
・ 診断料(CBCT)10000円
・ 前歯 70000円→90000円、小臼歯 80000円→100000円、大臼歯 90000円→110000円
→ マイクロスコープ使用、ニッケルチタンファイル使用
・ 隔壁作成 10000円、破折器具除去、穿孔封鎖、MTAセメント 30000円
支台築造(ファイバーコア) 10000円→15000円
歯根端切除術 ・・・ マイクロスコープ使用、保険適応外材料使用
・ 前歯 100000円、小臼歯 130000円、大臼歯 150000円
【歯周外科】
矯正的挺出(Extrusion) 30000円
歯周外科(1歯、FGG / CTG) 40000円
再生療法 1歯 80000円~(薬剤や骨造成の種類・量により、多少の上乗せがあります)
自家歯牙移植 100000円~(インプラントと比べると、自分の歯を使うのでより安心です)
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【保険治療か、自費治療か?】
これは自分自身の中でもなかなか理解が難しくて、患者さんへの説明にも、自分の診療のあり方でも、ずっと困ってきた問題です。
開院して10年間の現場での様々な経験でその都度いろいろ感じてきて、ようやくその落としどころが見えてきたような気がするので、今回はその一部をお話させて頂きます。
自費治療については、昔から「セラミック(きれいな白い歯)」や「インプラント(失った歯を取り戻す)」みたいな、どちらかというと「審美治療」や「高度な外科手術」なので高額(材料も高価なので高くても仕方がない・・・)というイメージが強いと思います。(僕も以前はそうでした)
また、「矯正治療(きれいな歯並び)」についても、高度な専門性と技術が求められるので、これまでは矯正専門医に通院して、費用も本格的に治療する場合はトータルで100万円前後でもそれが普通、という感覚が一般的でした。
一方で、保険治療は、どこの病院に行っても「安くて良い治療」が受けれる(のが当然?)と捉えられているところがあると思われますが、実はそれは医療従事者の現場での多くの自己犠牲と絶え間ない努力(奉仕?)のもとで成り立っていただけであって、新型コロナウイルスへの対応ではそれが破綻して様々な問題が噴出することになりました。(報道ではそのあたりがあまり取り上げられることがないのが・・・)
実際のところは、医療の技術も器材もものすごく進化している中で、値段(保険点数)がそれほど大きくは変わらずに推移していることからしても、最新で最高レベルの治療が安価で気軽に受けれるわけがないことぐらいは、冷静に考えれば気がつくことだと思います。
このような時代の流れと変化の中で、自費治療についても考え方を変えていく(パラダイムシフト)必要性が出てきたように感じています。
その理由のひとつは、デジタル化の流れです。
これは世の中の流れ(DX、デジタルトランスフォーメーション)にも一致する方向性で、歯科においてはものづくりの部分での技術革新が進んでいて、新しい種類の材料や技工物(被せ物や詰め物、インプラント、将来的には入れ歯も・・・)がたくさん出てきています。
また、最近はやりの「マウスピース矯正」も、この流れに乗っかったものと言えるでしょう。
しかしながら、これらはいずれももともと高度な技術が必要だった治療がデジタル化されていく中で、ものづくりの精度が上がった恩恵を受けている反面で、本来必要なステップがかなり簡略化されているけれどもまだその検証が十分にできていないところも多々あるので、「新しいものづくり」を現場でうまく活かしていくには、新たな知識と技術と経験の融合が求められます。(そのための研究費?あるいは開発費?も必要になってきます)
また、デジタル化を進めるには当然ですが設備投資も必要になるので、これらのコストが治療費に反映されてくるのは、何となく理解できるところかと思います。
そして、これらは言葉にすると簡単そうで、すぐに実現できてしまうように聞こえてしまいますが、実際は表に出ていないだけで、まだまだこれからのところもあるのが現実なので、慌てずに少しずつ取り入れていこうと考えています。
そしてもうひとつの理由は、先程とは真逆のアナログな部分です。
これもよく考えればわかることなのですが、歯科の仕事は技術職で、丁寧に治療をしようとするとどうしても時間が必要になるのですが、一方で保険点数は決まっているので、変な言い方にはなりますが、時間をかければかけるほど赤字になってしまいます。
じゃあ、手早く処置を終わって患者さんをたくさん診たら良いのか?というと、それも昭和ならわかりますが、さすがに令和の現在でそれがまかり通るとはとても思えません。
ドイツには高等職業能力資格認定制度を意味する「マイスター制度」がありますが、これは日本の保険医療制度とはおそらく真逆?の考え方になるので、制度にも資格そのものにもあこがれはありますが(職人なので・・・)、なかなか現実的にはそのような仕事をするのは難しいだろう、というのが正直なところです・・・(だからこそ、保険治療と自費治療の住み分けについて思い悩んでいる・・・)
一方で、最近の患者さんはその気になればスマホでいろいろ調べることができるので(SNSや口コミで発信もできてしまう・・・)、こちらの今までに勉強して身につけてきた知識と技術と経験(専門性)がなおざりにされて、患者さんの希望(ネットレベルの情報や思い込みに振り回されていることも・・・)がこちらの診断を上回り、治療方針にまで影響を及ぼしてしまっているケースもままあります。
それなのに、自分が満足いくような結果だけを当たり前のように求められるところが、今の時代の怖いところでもあります。
最近はこれまでの様々な経験を通してその対処法も少しずつ学んできてはおりますが、できれば、もう少し何とかならないかなぁ・・・というのが本音です。
このような痛みしかない(w)背景のもとで、じゃあどうすれば良いのか?、とずっと考えてきたのですが、結局、そのような構造を変えることはできないので、自分がその環境にどう適応していくしかないのかな?、と思うに至りました。
それはつまり、自分の「アナログな部分の強み」を活かすことです。
ここからは自費治療における、デジタル、アナログともにこれまでの経験(知識も技術もどちらもリアルファイトで得てきました!⚡)を踏まえたアプローチとその展開の話につながっていくのですが、実際のところはまだ試行錯誤の段階なので、いつかまたお話できれば・・・、と思います。
ヒントは、「モノからコトへ」ですね。
来年の5月で10周年を迎えるので、「痛みを伴う改革」を、楽しみにしておいてくださいね!